和牛のプロフィール
コンビ名:和牛(ボケ:水田 信二 ツッコミ:川西 賢志郎)
結成日:2006年(水田 1980年4月15日生 / 川西 1984年1月29日生)
出身地:大阪NSC26期出身(水田 愛媛県出身 / 川西 大阪府出身)
血液型:共にO型
所属:吉本興業東京本社
和牛の受賞歴でやはり最も有名な偉業は、M-1グランプリ 2016・2017・2018 3年連続準優勝でしょう。M1に連続決勝進出したコンビは過去数組いますが、連続しかも3連続準優勝したコンビは和牛のみ。
- 第30回ABCお笑い新人グランプリ新人賞
- 第31回ABCお笑い新人グランプリ新人賞
- 第43回NHK上方漫才コンテスト優秀賞
- 第44回NHK上方漫才コンテスト優勝
- M-1グランプリ2016 準優勝
- M-1グランプリ2017 準優勝
- M-1グランプリ2018 準優勝
- 第53回上方漫才大賞奨励賞
なぜ和牛はM1で優勝できなかったのか? 2018
かつてお笑いコンビ、ハリガネロックとして活躍した芸人のユウキロックが和牛を分析。
※ユウキロック。初期のM1や爆笑オンエアバトル等で活躍。2014年にコンビ解散。
現在は構成作家や松竹芸能タレントスクールの講師を務める。同期に中川家、ケンコバ、たむらけんじ、陣内智則などがいる。
2018年決勝、ラストに登場したのが2年連続準優勝、優勝候補筆頭の「和牛」。
伝説のゾンビネタ。
俺はこのネタを準決勝で見て、知っていた。だから、一緒に見ていた先輩芸人の方たちに「すごいネタです」と伝えていた。そんな先輩方も2分30秒過ぎからは「ほんまに大丈夫なん?」と聞いてくるほど、爆発はしていなかった。
しかし、気がつけばコントに入っており、笑いは津波のようにやってきて、大爆笑のフィニッシュだった。
点数は656点と「霜降り明星」にわずかに及ばず2位。
勢いに乗る「ミキ」を引きずり落とした。前半に爆発した「ジャルジャル」も、まさか3位まで後退させられるとは思っても見なかっただろう。
最終決戦。順番は上位のコンビから決められるということで、毎年、順当にファーストラウンド3位「ジャルジャル」、2位「和牛」、1位「霜降り明星」の順で披露することとなった。この段階で、俺は「霜降り明星」が圧倒的に有利だと感じた。
それは、「ジャルジャル」「和牛」は1本の「ネタ(作品)」として勝負であり、それがファーストラウンドを超えなければならない。対して、「霜降り明星」は「ボケ数と質」勝負であり、ファーストラウンドと同じくらい「ボケ数」が多いネタであるならば、問題ない。
さまざまな場で何度も試してきたであろうから、スベる可能性も低い。そこまで博打にはならないはずだ。俺も「ボケ数と質」で勝負していた漫才師だったからわかるのだが、多少ボケが弱くとも、その後のボケと比較になり、弱いボケが強いボケをより強く見せる効果にもなる。そこが強みになるのだ。
「霜降り明星」が圧倒的に有利だろう。そう考えていたが、ひとつ気になっていたことがあった。「和牛」は「3回戦、準々決勝で披露したネタで勝負するのだろうか?」と。そのネタならば、勝負にならない。技術は抜群で脚本も素晴らしいが、単純に笑い数が少ないのだ。最終決戦で「和牛」はいったい何を出してくるのか?
トップバッターは「ジャルジャル」。「自己紹介の自己主張の取り合い」とでも言うのか? 「遊び」シリーズとは違うネタを披露したが、ファーストラウンドを超えられなかった。
そして、「和牛」の登場。ここで2人は最終決戦用に温存していたであろうネタで勝負に出た。ここまでネタが温存できる「和牛」はやはり化物だ。
「オレオレ詐欺」の漫才コント。
これが2幕3幕と移り変わる。見つめ合っただけであんなに笑いが来るのか? 圧巻である。最後もガッチリ決めてみせた。
ラストは「霜降り明星」。彼らの勢いは最終決戦まで続く。またもやボケ数も多く、質も高い。昨年から披露していたネタのボケも組み込んで大爆笑である。
「和牛」のネタが少し頭を使う分、粗品君がおもしろツッコミで「答え」を提示してくれる漫才は、見ているほうが楽だったのではなかろうか?
結果は、「M-1ラストイヤー」に燃える「ジャルジャル」、優勝候補「和牛」を退けて、「霜降り明星」が最年少優勝を成し遂げた。
なぜ和牛はM1で優勝できなかったのか? 2019
2015年に復活した第11回大会から昨年まで4年連続決勝進出。そして、3年連続準優勝。「現代漫才界の最高傑作」「M-1の帝王」それが「和牛」である。
漫才師たちは己の漫才を武器にその他の25組と殴り合う。それが準決勝なのだ。しかし、「和牛」だけが対戦相手が違う。「和牛」の対戦相手は「和牛」なのだ。そう過去の「和牛」との戦いなのだ。
「M-1グランプリ」の決勝では出場者にキャッチフレーズがつけられる。俺が「ハリガネロック」として決勝大会に出場したときのキャッチフレーズが「武闘派」だった。
「和牛」は初出場の第11回大会は「心にさされ!非情な愛のボケ」と「和牛」自体の紹介をキャッチフレーズにしている。
第12回大会は敗者復活戦からの決勝進出なのでキャッチフレーズはなく、前年準優勝をして挑んだ第13回大会は「3度目の正直」と優勝候補としてのキャッチフレーズをつけられ、昨年はなんと「第4形態」という漫才の「進化」を匂わすキャッチフレーズである。
ここ数年は番組サイドからも高いハードルを設けられ、それを「和牛」は超えてきたのだ。例えるなら「和牛」は毎年最高級な大トロクラスの「ネタ」を提供してきた。それが2年前の「仲居さん」ネタであり、昨年の「ゾンビ」ネタである。
赤身を食べていた人が中トロを食べたときに「うまい」と感じるが、大トロを食べ続けた人は贅沢になる。普通の大トロでは満足しなくなる。しかも、それが中トロにでもなろうものなら「おいしくない」と思うかもしれない。俺の年になれば大トロは脂が乗りすぎていて、中トロが「うまい」と感じるときもある。しかし、繰り返しになるが「M-1グランプリ」は「新人発掘番組」という一面もある。「脂が乗りに乗った大トロを食す」。これが「M-1グランプリ」なのだ。
3年連続準優勝して、全国区の人気を獲得し、誰もが認める漫才師である「和牛」だが、「M-1グランプリ」の王者になるには、自分たちで作り上げた大トロを超える大トロのネタを提供しなければならない。「和牛」に対して「海鮮」で例えるのはいかがなものかと思うし、俺みたいな「赤身」がこういうことをいうのは「和牛」に対して失礼なのだが、準決勝の「和牛」は過去の「和牛」を超えていなかったと俺は感じた。
「これ、『和牛』ないぞ」。映画館を出るときに俺は思った。俺はTwitterに「今回はメンバーがガラリと変わるかもしれません」と投稿した理由は、「和牛」敗退を感じて、審査員はそこから大きなシフトチェンジをするのではと感じたからだ。「見取り図」も「かまいたち」もなく、「全組初出場」という舵を切るのではとも感じた。
「和牛」が敗者復活戦に出場する。2016年の第12回大会以来となる。当然、その年は勝ち上がっている。しかし、あのときと今の「和牛」は違う。
今は「M-1の帝王」なのだ。
こんな屈辱はない。「和牛」は「猛牛」となるだろう。敗者復活戦の勝ち上がりが目標ではないはず。準決勝に敗れてなお、彼らの目標は「優勝」なのだ。
来年のM1に和牛は出るのか?
2019年「和牛」が敗退した。彼らは今大会をもって「M-1」を卒業すると放送終了後に語ったという。ただ、俺は心配していない。 そんなわけはない。いいネタができ、出場資格があるならば出たくなるはずだ。そして、「和牛」はいいネタが必ずできる。来年の8月には普通にエントリーしています。必ず。
by,ユウキロック
まとめ
大半の他のコンビは、当たり前に「そのネタが面白かったかどうか」で判断されますが、和牛は「そのネタが面白いかどうか」+「去年のネタより面白いか」がかなりの比重で見られてしまっているという事ですね。
言われてみれば、そうかもしれません。しゃべくり漫才では元々あまりそんな見方をしませんが、漫才コントを得意とするコンビでも、和牛ほどそういった見方は何故かあまりされない気がします。
そして最後のユウキロック氏の和牛への思いに感動します。